特定調停による債権放棄により、事業再生を果たした事例 特定調停による債権放棄により、事業再生を果たした事例

Contact

パートナーズ
プロジェクト

Partners Project

1.事業再生

伝統ある波佐見焼を
後世まで守り続けたい

事業再生

事業を続ける決意と、
商品への愛情
ふたつの熱量が、
サービサーを動かす

波佐見焼は、長崎県の伝統的な陶芸品である。
透き通るような白磁に、藍色の顔料で描く文様が美しく、
和食のみならず洋食・スイーツのシーンでも活躍する食器として人気だ。

そんな波佐見焼をつくる、とある企業がある。
商品はとくにバブル期に人気を博し、大量生産に踏み切っていた。
しかし現在では、その時の設備投資による借入金が、企業に重くのしかかっていた。

返済する手段がわからない
経営を変える“第三者の目”を探していた。

焼き物の原料となる粘土「陶土」のメーカーとしてスタートした企業。
分業化が進む陶磁器の分野において、陶土、生地づくり、窯元まで自社で一貫して生産できる体制を確立し、事業は堅調に推移してきた。
ただひとつ、バブル期に導入した設備の借入金だけがネックになっていた。

「売上高が激減し、本来の返済計画通りに借入金の返済ができていない。生産性・収益性を上げて返済ができるよう、企業を変えなければ…」

しかし、どうやって?
アイデアに詰まった企業は、金融機関に紹介されたグッドパートナーズに声をかけた。
「ぜひ第三者の目線から、財務や事業再生計画の提案をしてもらえないだろうか?」


借入金の減額を実現する『特定調停』の提案

本来行うべき設備更新ができず、生産性を上げることができないから、借入金を返済できない。事業は続いているものの、あたらしいことに踏み込めない、まさに負のスパイラルと言えた。

「では、金融機関に現状の生産性で返済できる金額まで借入金を減額してもらえないか相談してみませんか」

借入金の減額に応じてもらえたとしても、減額分に対して税金がかけられてしまう。そこでグッドパートナーズが提案したのは、借入金減額と税負担を同時に解消できる『特定調停』だ。

特定調停とは、借金の返済が滞りつつある債務者の申し立てによって、簡易裁判所がその債務者と債権者との話し合いを仲裁し、返済条件の軽減などの合意が成立するよう働きかける制度のことを指す。

グッドパートナーズの提案は、この制度を使って借入金の減額に応じて頂き、月々の返済額を減額し、老朽化した設備の更新資金を調達することだった。

「特定調停においても、債権額を減額するとなれば、債権者側は寄付金とみなされ、一方で債務者においても債務免除益による課税が発生します。しかし、合理的な再建計画があれば、これらの問題も解決できる。会社を救済するためには、この方法が最適解だと考えられます」

綿密なリサーチと事業再生計画で、
債権放棄へと導く。

波佐見焼はどのようなところで販売され、どういう傾向のものが売れているのか。
現在の波佐見焼市場の実態を知り、分析することで、今後の事業の道すじが見えるはずだ。
設備投資をした時代からの波佐見焼の変遷をつぶさに見、両者は何度も話し合いを重ね、綿密な事業再生計画を立てた。

これにより、債権者に企業の現状を理解していただき、「債権を放棄しやすい」状況を作り出すことができた。

そしてこの提案は受け入れられ、見事、債権放棄に応じてもらうことができた。


返済額の軽減、あたらしい融資。
ひとつの戦略がもたらした前進への道。

月々の返済額が軽くなったことで、企業はあたらしい設備を導入することが可能になった。
窯を移転し、より効率のよい製造を行うことで、減額された借入金を返済。
順調に返済金額は減っていく。

頭を悩ませていた「お金はある、しかし、返済も同じくらいある」という状態から、ついに抜け出すことができたのだ。
さらに効率化のサイクルを上げるため、あらたに融資を受けることも決まった。

「特定調停により、借入金を減額する」
たったひとつの戦略で、ただ回転するだけの道は、螺旋を描いて上昇する道へと変わったのだ。


サービサーの心を動かす
誠実な姿勢が、企業を救う。

事業再生にはデータが必要だ。
市場を分析し、今後の見通しを立て、計画に沿って事業を推進していく。
特定調停は、そのための打ち手のひとつでしかない。

波佐見焼という陶芸品が長く愛されるのは、そこに人の心が宿っているからこそ。
互いの意見を尊重すること。そしてそれに対し、誠実に事業を行うこと。
この配慮があれば、立場は違えども理解を得ることができる。

商品は求められている。しかし、その背中を掴むほんの小さな要員を見逃さないこと。
そしてそれに対し、的確なリサーチを行い、長期的な目で計画を立てること。
このことが、サービサーの心を動かし、企業の歩みへとつながった。

商品を愛するからこそ、相手の理解を得ることができる。
事業とは、事業主の情熱なくしては成り立たないのだ。

白磁に描かれた、藍色の文様。花や葉、縞模様などを写し出し、
日本人の心を掻き立てる美しい食器が並ぶ。
あたらしい窯から生み出される波佐見焼は、これからも誰かの生活を彩っていく。